EV市場の失速で「テスラ終わった」「やっぱりトヨタが正しかった」のような論調が展開されることがあります。
確かに、世界的なEVシフトの流れはHVを主力とする日本の自動車メーカへの対抗という向きもあったかもしれませんが、「トヨタ」vs「テスラ」といった捉え方をしてしまうのは非常にもったいないかなと思います。
というのも、
両社は自動車を製造・販売することを(現時点では)事業の柱としているものの、掲げているビジョンは全く異なっているからです。
筆者としてはトヨタ、テスラどちらも応援していますが、特にテスラには大いに期待しています。
テスラに注目しているポイントは、
- EV車を中心としたクリーンエネルギー事業の発展
- 自動運転の実現による交通渋滞・交通事故の低減
- ロボティクス・AIによる新しい産業の創出
など。
EV車両の販売台数を拡大して利益を生み出すことより(もちろんそれも重要なのですが)、そこから変わっていく未来を楽しみにしている感じでしょうか。
インデックス投資を中心としたコア・サテライト投資として、いくつか個別株も保有しておりますが、中でもテスラは最も高い保有割合となっています。
まぁ色々とお騒がせな部分もあり、一般的にはむしろネガティブなイメージの方が強いかもしれませんが、取り組んでいること自体やその技術的なレベルの高さは素晴らしいと思います。
ということで、筆者の投資状況とその見解について紹介します。
テスラ(TSLA)への投資状況
テスラの株式(TSLA)にフルベットしているというわけではなく、取れるリスクの範囲内で資産の一部を配分しております。(とはいえ、それなり大きな割合ではあります。。)
投資額
過去に利益確定した分を除き、最終的に現在は取得単価¥28,274で400口(¥11,309,600)、24年に入ってからはかなり下落しておりますが、為替の影響もあって今は若干のマイナス(-46,159円)でとどまっているところ。
このまま下落し続ければ、含み損は一気に大きくなっていきますが、中長期的に見れば今のポジションのままで良いかなと判断しています。
テスラへの期待
EV市場が減速している状況の中で、テスラの株価も年初来で35%も下落。それでも株価収益率(PER)は40〜50倍以上と未だ割高な水準。一体どこに期待が持てるのか?といえば「車社会の変革」に対してです。
資本主義において求められるのは「より多くの車を市場に展開し、シェアを拡大し続ける」こと。
しかし、地球環境にとって、人類にとって果たして良いことなのか?は疑問が残ります。
なんといっても、環境問題、特に脱炭素化(カーボンニュートラル)や交通事故の撲滅は、社会的には待ったなしの状況。
現状の延長線では「需要と供給のバランスをとりながらできる限り改善していくしかない」というのが実情かもしれませんが、例え「より環境にやさしい車」「より安全性の高い車」であっても、毎年8,000万台以上もの車が生産され続けているとなると、そんな悠長なことも言ってられない気もします。
テスラが発表しているインパクトレポート(概要)などを確認すればわかりますが、テスラは化石燃料を持続可能なエネルギーに置き換えていくことを明確なビジョンとして掲げ実行しています、というかそれ自体がテスラの企業としてのミッション(企業使命)です。
いつ、誰が、どのように車社会を変革していくかはわかりませんが、変革が求められる時期が来ているの確かでしょう。
テスラは、以下の点で車社会の変革をリード、もしくは社会の変革に対応していけると考えられます。
- EV車を中心としたクリーンエネルギー事業の発展
- 自動運転の実現による交通渋滞・交通事故の低減
- ロボティクス・AIによる新しい産業の創出
トヨタもモビリティカンパニーへと変革を遂げようとしているようですし、こちらも頑張って欲しいと思います。
世界のEV市場の状況
まずEV市場の動向、およびテスラの市場優位性はどうなのか、考えてみます。
EV市場は今後も成長分野
2024年に入って明らかになったことはEV市場の「成長率」が鈍化しているということ。
国際エネルギー機関(IEA)が4月23日に発表した「世界EV見通し2024」を見ても明らかなように、世界的にEV市場が成長し続けているのは事実ですし、今後もそのシナリオであることは世界的な共通認識のはずです。
でも、なぜか「EVは終わった」という認識を持っているとしたら要注意です。
- 日本国内ではEVのメリットがないから
- メディアの論調を鵜呑み
- EV化への反発心
これらによるバイアスがかかっている(かも)、です。
確かに、BEVには課題も多く、さらに古参の自動車メーカにとってはEV車を製造・販売して利益を出すこともままならないようです。これは、まだ量産効果を見込めないことが一番の要因だと考えられますが、EV市場がより拡大していくと伴に改善されていくのではないかと思います。
TESLAの立ち位置
何より重要なのは、今後も成長するEV市場において「テスラの優位性があるか」でしょう。
というのも、EV市場へ参入するメーカが増え、供給量が多くなれば、コスト競争は激しくなるものです。(すでに中国メーカ勢の台頭により熾烈な競争が繰り広げられています。)
この中国メーカの勢いは凄まじいものがあり、車両のコストや性能という点でテスラの優位性は失われつつあるように見えます。
ただ、厳しいのテスラに限った話ではありません。
むしろ他のメーカの方がEV車の販売で利益を上げるのが苦しい状況に陥ったという点では、テスラの優位性は以前よりも増しているという見方もできます。
というのは、他社はこれからEVを市場投入していくという段階ですが、テスラはバッテリーの経年データや自動運転開発用の訓練データといった、今後の商品力向上につながる貴重な市場データを収集&活用するフェーズに移行しています。これは他社とは比較にならないほど多くのEV車を市場に送り出しているテスラにしか出来ません。
- 量産効果で原価改善しキャッシュを生む
- 市場から収集したデータを活用し競争力を向上
- 新たなサービスやソフトウェアを新車のみならず既販車や他社へのライセンスとして販売
この❶〜❸のサイクルが確立されつつあるため、車の性能やコスト、販売台数といったデータからは見えない圧倒的な優位性が生じているとも考えられるわけです。
テスラの自動運転戦略
では、これから商品力のキーアイテムは何か?といえば「自動運転」。
テスラの自動運転技術であるFSD(Full Self Driving)は現在も自動運転レベル2止まりだったり、Lidarなどの測距センサーや高精度地図データを使用しないカメラベースのピュアビジョン方式であることから、完全な自動運転の実現には懐疑的な見解を持つ方も多いと思います。
ただし、現在の自動運転レベルで優劣を評価していては本質を見誤る可能性があります。
高価格な特別な車をベースに、ある条件下でレベル3、レベル4と向上させていっても、適応範囲が限定されてしまうのであれば実質的な波及効果も限定的。
それよりも、
今乗っている車でも使える「人間が運転するよりも安全で快適な機能」があれば、その方が社会にとって有用です。
何をもって「人が運転するよりも安全」と判断するかは、統計データから事故率を比較検証することになるでしょう。運転手が交通事故を起こす確率はどのくらい?交通事故の主な原因や事故防止の対策を解説という記事によれば、
日本では、約250人に1人の運転手が一年間に交通事故を起こしています。交通事故が発生する原因には、安全不確認や脇見運転、動静不注視などがありますが、いずれも運転手の油断から来るものがほとんどです。
引用:運転手が交通事故を起こす確率はどのくらい?交通事故の主な原因や事故防止の対策を解説(ビークルアシスト)
とのこと。
この事故率を1桁、2桁と低減させていくのに、個々人の意識や運転スキルの向上に期待することはできませんが、機械(特にデータから学習するAI)による自動化(=自動運転)であれば、指数関数的に事故率を低減させる可能性があります。
テスラのFSDは、事故率という観点でいえば、すでに人が運転するよりも安全なレベルに達しているようです。最近ではNVIDIAのCEOジェンセン・フアン氏が「テスラは自動運転で先行している」と認めているように、テスラの自動運転技術は飛躍的に向上している最中にあります。
ロボティクス・AI
テスラ、というかイーロンマスクはヒューマノイドロボット事業も立ち上げようとしています。
Trying to be useful lately! pic.twitter.com/TlPF9YB61W
— Tesla Optimus (@Tesla_Optimus) May 5, 2024
背景には、急速に成長しているAI技術の応用先ということになりますが、テスラはヒューマノイドロボットを構成する以下の要素を自動車開発で培った技術を応用しています。
- モータ
- バッテリー
- センサ(コンピュータビジョン)
- AI
将来的にはこれらの主要な構成要素を高性能かつ安価に製造、提供できるため、確かにテスラが取り組むのは理にかなっているのかもしれません。(テスラ以外でイーロンマスクが手がける宇宙開発やAI開発とも親和性があります。)
どんな市場規模になるのかも想像できない世界ですが、車よりも大きな市場になるとも言われており、ヒューマノイドロボットを開発するスタートアップが勃興していたり、市場への期待も高まっています。
さいごに
テスラへの投資状況と期待している内容について紹介しました。
かつては「家電製品」、「パソコン」、「携帯電話」と日本のメーカが市場を牽引していたものの、そのものとしての品質を追求するだけでは立ち行かなくなり、いずれ衰退してしまったという過去の歴史がありますが、次にこの展開が予想されるのが「車」とも言われています。
良くも悪くも日本の自動車産業は今の日本経済を支えている柱の一つですので、そんな展開になってもらっては困るのですが、一方で、変革を推進するテスラにも期待せずにもいられない、というのが実情。
状況が変化したら更新していこうと思います。